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東京家庭裁判所 昭和40年(少ハ)27号 決定 1965年6月28日

本人 U・R(昭一九・六・二三生)

主文

本件申請を却下する。

理由

本件申請の趣旨は、上記本人は、昭和三九年五月二二日東京家庭裁判所において中等少年院送致の決定を受けて八街少年院に収容されたが、犯罪的傾向がなお矯正されていないと認められて昭和四〇年五月二二日より一ヵ月間の収容継続決定を受けて現に在院しているものであるところ、その後下記のような自己の陰部への自傷行為があつたことが発覚したので、なお一ヵ月間の収容継続決定を求めるというにある。

ところで当裁判所は、再度の収容継続申請も法的には適法である(但しその運用は極めて慎重を要する)ものと解するところ、本件につき当裁判所調査官中野正俊及び八街少年院分類保護係長佐々木良夫の意見を聴いて判断するに、(1)昭和四〇年二月頃より同少年院の在院生の一部に俗に「人工衛星」と称する陰部への自傷行為が流行のように行われ上記本人も同年四月一五日頃これを行つたこと、(2)その目的は性交時に快楽を高めるためであるが、この行為はしばしば暴力団員等が水商売などの女性のヒモとなるため当該女性を自己にひきつけておく一手段として行われることが多いところ、上記本人についてはそのような意図ないしは客観的状況(換言せば退院後における反社会的生活への徴候)は全く認められず、当該行為は健全なものでないにしても、その動機は本能と周囲の雰囲気によるいたずらないし興味本位なものと認められること、(3)本人は、昭和四〇年五月一日一級の上に進級して同月一〇日室委員に指定され、同月二〇日収容継続決定の告知を受けているのであるが、本件行為はその前に行われたものであるのみならず、同年六月一〇日上記行為が発覚してからは、懲戒として単独室での謹慎三日・室委員免除の処置を受け、且つその間及びその後の反省の態度が良好であるため他の少年にさきがけて室委員に再指定されていること、(4)院側においても院内秩序の維持の目的はすでに概ね達せられたとしていること等の事実が認められ、これに本件が再度の収容継続申請であり且つ帰住先も確保せられていること等の事情を併せ考えると、上記本人につきなお、再度収容を継続すべき合理的根拠が認められない。

よつて本件申請を理由なきものと認め、主文のとおり決定する。

(裁判官 小谷卓男)

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